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古代史最大級の謎「天孫降臨」の舞台とは? 『記紀』の世界を体感する高千穂町~馬ケ背の景勝地

■真名井の滝と馬ケ背の大絶景

 

 この後は、瓊瓊杵尊の天孫降臨の舞台とみなされることもある高千穂峡だ。目指すは、人気随一の景勝地・真名井の滝である。柱状節理の断崖絶壁が連なる五ヶ瀬川へと流れ落ちる、落差17mの豪快な滝を見ずして帰るわけにはいかないのだ。瓊瓊杵尊の天降りに随伴した天村雲命が水種を蒔いて流れ出た天真名井の水が、地下をたどってここに流れ落ちたとされる神話の舞台である。この滝の上には、国生み神話に登場する「おのころ池」や「おのころ島」と名付けられた実に小さな池や島まで設けられているから、時間があれば足を伸ばしておこう。

峡谷内には日本の滝百選に指定されている名瀑「真名井の滝」があり、高千穂峡のシンボルとなっている。

 その北、徒歩5分ほどのところにある高千穂神社では、毎晩20時から、神話の世界を再現した夜神楽が催されている。岩屋戸の前で天鈿女命(アメノウズメ)が舞う艶やかな姿や、岩屋戸を持ち上げて投げ飛ばす手力男の勇壮な舞いなども、機会があれば堪能したいものだ。

 

 また、ここから日向灘方面へと足を延ばす機会があれば、絶景地・馬ケ背にも立ち寄っておきたい。高千穂峡同様、柱状節理の荒々しい岩肌が連なるところで、日向灘に広がる大海原の眺望が楽しめるからだ。

 

 そこはまた、神武天皇の東征経路にあたるところでもある。「何地に坐さば、平らけく天の下の政を聞こしめさむ。なほ東に行かむ」と『古事記』にも記されたように、安らかに治めるべき天下を求めて東征の途についた神武天皇。その出航の地が、馬ケ背の10数キロ南に位置する美々津港辺りと考えられている。神武天皇が実在し、『記紀』に記された東征の旅が史実だとすれば、神武天皇はこの馬ケ背の前を意気揚々行き過ぎていったはず。そんな歴史の情景を思い浮かべながら、眼下に広がる大海原を目の当たりにすれば、感慨もひとしおとなるに違いない。

日向岬・馬ケ背

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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